生地技術情報
GRS認証生地:バイヤーが確認すべきポイント
サプライヤーのGRS証明書は確認の出発点にすぎません。再生原料、認証範囲、CoC(管理の連鎖)、実際の出荷に紐づく取引証明書を確認する必要があります。

サプライヤーからGRSのスコープ証明書が届き、「この生地はリサイクル素材です」と説明されたとします。それだけで発注を承認してよいのでしょうか。
いいえ。
その証明書によって、企業が特定のGRS製品や工程を取り扱う資格を持つことは確認できます。しかし、提示された生地が再生糸で作られたことや、今回の出荷が認証制度の対象であることまで、証明書単体で証明できるわけではありません。
GRS認証生地を調達するバイヤーが実務で確認すべきなのは、原料、認証されたサプライチェーン、そして実際の製品に紐づく取引証明書です。
GRSスコープ証明書は確認の出発点
スコープ証明書(Scope Certificate、通常はSCと略記)は、企業が監査を受け、承認された範囲に記載された原料、製品カテゴリー、加工業務について認証されていることを示します。
SCでは、次のような点を確認できます。
• 企業の認証は現在も有効か。
• どの原料と製品カテゴリーが含まれるか。
• どの製造工程または取引業務が対象か。
• 認証施設はどこにあるか。
• 証明書の有効期限はいつか。
一方、その企業が製造するすべての生地がGRS認証品であることを示すものではありません。
有効な証明書を持つ織布工場でも、バージン原料の製品と再生原料の製品の両方を生産している場合があります。染色工場の認証範囲に加工工程が含まれていても、特定の注文で使う糸は、有効な認証チェーンを通って投入されなければなりません。
したがって、「当社工場はGRSを取得しています」という説明だけでは不十分です。バイヤーは、Textile ExchangeのFind a Certified Companyデータベースで証明書を検証し、注文に必要な原料と工程が認証範囲に含まれているかを確認してください。
スコープ証明書と取引証明書の違い
GRSのスコープ証明書と取引証明書の区別は、リサイクル生地の調達で特に混同されやすい点です。
スコープ証明書は、認証組織と、その組織に承認された業務に関する書類です。
取引証明書(Transaction Certificate、通常はTCと略記)は、ある企業から別の企業へ移転する認証製品に関する書類です。製品と取引に固有の情報が記載され、商業書類や船積書類と一致していなければなりません。
Textile Exchangeによると、TCには認証製品、購入者、出荷に関する情報が含まれます。認証製品の所有権が移るたびに、新しいTCが発行されます。
生地バイヤーにとっては、次のような意味があります。
• SCは、サプライヤーが認証制度の中で業務を行う資格を示します。
• TCは、特定の取引に含まれる認証製品の証拠になります。
• 2つの書類は役割が異なります。
有効なSCがあっても、出荷に固有のTCがなければ、バイヤーのトレーサビリティ資料は完結しません。
生地ラベルではなく、糸から確認する
見積書、サンプルラベル、請求書に「GRS」と書かれているだけで、完成した生地が再生素材になるわけではありません。
リサイクル含有率の主張は、投入原料から始まります。織物では、次のような複数の事業者が関わることがあります。
• 再生原料サプライヤー
• 糸メーカー
• 織布工場
• 染色・整理加工工場
• 商社または生地サプライヤー
• 表示内容とサプライチェーンによっては縫製工場
関連する各段階を、適用される認証要件とCoC(Chain of Custody、管理の連鎖)要件に従って管理する必要があります。
バイヤーは、次の点を確認してください。
• 表示されているリサイクル含有率は何%か。
• プレコンシューマー原料か、ポストコンシューマー原料か。
• 再生糸を供給したのは誰か。
• 糸の取引を裏付ける書類があるか。
• 製織、染色、整理加工が有効な証明書の対象になっているか。
• 適格な出荷についてサプライヤーがTCを提出できるか。
これらの確認は、リサイクルポリエステル生地にもリサイクルナイロン生地にも重要です。繊維名だけではトレーサビリティを証明できません。
CC Textileのリサイクルナイロン事例
CC Textileは、手袋用に開発した平織り生地を次の仕様で供給しました。
• 混率:リサイクルナイロン100%
• 組織:平織り
• 目付:約139 g/m²(GSM)
• ストレッチ:スパンデックスなし
• 最終用途:手袋
認証チェーンは、再生糸、製織、染色の各段階を対象としていました。プロジェクトでは、関連するスコープ証明書と原料書類を確認しました。
IntertekがGRS認証手続きを担当し、注文に対する取引証明書を発行しました。TCは出荷後に取得し、提出されました。
出荷後のTC発行が、直ちに問題になるわけではありません。TCは最終的な商業情報と出荷情報に一致する必要があり、認証機関の手続き上、発行完了前にそれらの情報を求められる場合があります。
ただし、提出時期は生産前に合意しておくべきです。バイヤーは、社内承認、ブランド報告、通関書類、次の認証取引などにTCを必要とすることがあります。提出時期についてサプライヤーとバイヤーの認識が異なると、原料が正しく認証されていても注文が遅れる可能性があります。
TCでバージン糸を再生糸に変えることはできない
CC Textileが実際に経験した別のサプライチェーン事例では、サプライヤーが再生糸を使用した生地だと説明していました。しかしその後、糸が再生原料から作られていないことを顧客が確認し、製品を不合格としました。
後から追加のTC書類が提出されましたが、顧客の判断は変わりませんでした。
理由は単純です。書類によって、生産で実際に使った原料を訂正することはできません。
工場の証明書や見積書の「リサイクル」という記載だけを信用すると、このリスクが生じます。製造指図にバージン糸が投入された場合、後日提出された書類で物理的な投入原料を再生素材に変えることはできません。
想定される経済的損失には、次のものがあります。
• 完成生地または縫製品の不合格
• 代替品の再生産
• 納期遅延
• 顧客のシーズン販売機会の喪失
• 追加の試験・検品費用
• 予定していたリサイクル含有率表示を立証できないこと
• 責任と補償をめぐる紛争
GRS書類は、バイヤーから証拠を求められて初めて集めるのではなく、量産前に計画しておく必要があります。
GRSが求めるリサイクル含有率は何%か
Textile Exchangeは現在、GRS制度の企業間利用と消費者向けラベル表示を区別しています。
公式ガイダンスでは、リサイクル含有率が20%以上の製品について、GRSをB2Bツールとして利用できます。消費者向けのGRSラベル表示には、50%以上のリサイクル含有率が必要です。
これらの基準値を、個々の生地で実際に表示する混率と混同してはいけません。
サプライヤーがリサイクルナイロン100%の生地を提示する場合、その100%という表示を証拠で裏付ける必要があります。規格への参加に必要な、より低い最低基準を満たしていても、その素材を100%リサイクルと表示する根拠にはなりません。
バイヤーは、製品仕様書、発注書、必要書類チェックリストに、要求するリサイクル含有率を明記してください。
現行要件とラベル表示の区別は、Textile Exchangeの公式GRS・RCSページで確認できます。
取引証明書で確認すべき項目
TCは注文書類として内容を確認し、未確認のまま保管しないことが重要です。
以下の情報が取引内容と一致するかを確認します。
• 売主と買主の名称
• 認証組織の情報
• 認証規格
• 製品説明
• 繊維組成とリサイクル含有率
• 請求書の参照番号
• 出荷または輸送情報
• 数量または認証重量
• 発行日
• 発行した認証機関
• 証明書のステータス
製品説明は、証明書と購入した生地を結び付けられる程度に具体的でなければなりません。商業書類に「リサイクルナイロン織物」とあるのに、TCには別の素材や製品カテゴリーが記載されている場合、その不一致を解消する必要があります。
2022年10月1日以降に発行された取引証明書は、Textile Exchangeの公式Certificate Authenticationシステムで照合できます。不明点があれば、発行した認証機関に問い合わせることもできます。
サプライヤーから受け取ったPDFにロゴと証明書番号があるという理由だけで、有効だと判断してはいけません。
発注前にTC要件を確定する
TCについては生産後に協議するのではなく、見積依頼(RFQ)または発注書に要件を記載してください。
実務的な要件には、次の項目を盛り込めます。
• 必要な認証規格
• リサイクル含有率
• 必要な繊維と生地構造
• プレコンシューマーかポストコンシューマーか
• 認証が必要なサプライチェーンの各段階
• 糸または原料に必要な裏付け書類
• 出荷に固有のTCが必要か
• TCの提出期限
• 認証費用と取引書類費用を負担する当事者
• 必要書類を提出できない場合の対応
また、見積価格に認証原料、認証事務、TC申請の費用が含まれているかも確認してください。
安い見積りでは、これらの費用が除外されていたり、未認証の糸が前提になっていたりする場合があります。書類の範囲を比較せずに価格だけを比較すると、見かけ上の節約になりかねません。
GRSは生地性能試験の代わりにはならない
GRSはリサイクル含有率とCoC要件を検証し、認証加工に関する要件も含みます。ただし、無関係な生地性能の証明として使うものではありません。
GRS認証生地だからといって、自動的に次の性能を備えるわけではありません。
• 防水性
• はっ水性
• 透湿性
• 耐摩耗性
• 引裂強さ
• 染色堅ろう度
• 寸法安定性
• PFASフリー
これらの特性には、それぞれの仕様と、必要に応じて案件別の試験機関による試験が必要です。
例えば、手袋用のGRS認証リサイクルナイロン生地でも、引裂強さ、耐摩耗性、染色堅ろう度、寸法安定性の試験が必要になる場合があります。適切な試験は、手袋の構造と用途によって異なります。
同様に、GRS認証を、バイヤーのRSLや特定のPFAS要件に適合している証拠として提示してはいけません。化学物質書類、試験範囲、試験方法、報告限界は別途検討する必要があります。
CC Textileの品質・コンプライアンスでは、案件別試験と書類確認を生地開発と並行して進める方法を紹介しています。
GRS認証生地の承認チェックリスト
GRS認証生地の注文を承認する前に、調達チームは次の点を確認してください。
• 正確な繊維組成とリサイクル含有率
• プレコンシューマーまたはポストコンシューマーの再生原料
• 原料または糸の書類
• 関連する各スコープ証明書の有効性
• 各認証範囲に含まれる原料、製品、工程
• 糸から製織、染色、整理加工までの連続性
• サンプル、注文、量産仕様の整合性
• 取引証明書の要否
• TCの提出期限
• 証明書の情報と請求書・船積書類の一致
• 公式システムによる証明書の真正性確認
• 性能、化学物質、法規制に関する別個の要件
• 認証書類を提出できない場合の書面手順
目的は証明書の数を増やすことではありません。書類が、実際に購入・生産された原料を正しく表していることを確認するためです。
表示が市場に出る前に検証する
「GRS認証生地」は調達で役立つキーワードですが、それを起点に追加の確認を行う必要があります。
スコープ証明書は、認証を受ける資格と範囲を確認するものです。取引証明書は、認証製品を特定の取引に結び付けます。原料記録は、生産に何が投入されたかを示します。いずれも単独で評価すべきではありません。
リサイクル生地の仕様書、既存サンプル、または認証要件をお持ちの場合、CC Textileは生地開発サービスを通じて、提案組成、製造ルート、必要書類を確認できます。
CC Textileの織物カテゴリーもご覧いただけます。RFQと希望する認証要件を添えて担当チームへお問い合わせください。
調達と認証に関する幅広い情報はTextile Allianceで、生地の最新情報はInstagramでご確認いただけます。
#GRS認証生地 #リサイクルナイロン #取引証明書 #生地調達 #サプライチェーントレーサビリティ
よくある質問
サプライヤーのGRSスコープ証明書だけで生地を発注できますか?
いいえ。スコープ証明書は企業の認証範囲を示しますが、すべての製品や出荷が認証済みであることを証明しません。再生原料を確認し、該当する取引証明書も求める必要があります。
GRSのスコープ証明書と取引証明書の違いは何ですか?
スコープ証明書は、認証組織と承認された製品・工程に関するものです。取引証明書は、特定の取引で移転する認証製品に関するもので、商業書類や船積書類と一致する必要があります。
GRS取引証明書は出荷後に提出できますか?
はい。認証機関の手続きと最終船積書類の準備状況によります。バイヤーは量産前に提出期限を合意しておく必要があります。
GRS認証は生地の防水性やPFASフリーを証明しますか?
いいえ。GRSは、案件別の防水、DWR、透湿性、PFAS、その他の性能・化学試験に代わるものではありません。各要件を個別に指定し、検証する必要があります。